僕がこうしてアンダーライブのレポを書き続けてきたのは、もちろん最初は本当に楽しかったからなんだけど、なんだか最近は使命感のようなものを感じてる。もちろん変な意味ではなくて、この大事なライブを今実際に目撃してる体験ってすごい貴重なんだろうと思うから。
このライブ自体映像作品として世に出ないかもしれないし、輝かしい乃木坂46の活躍の中で”影”のような彼女たちの軌跡は、活動の歴史の中で語られることすら少ないかもしれない。実際一般人はもとよりアイドルヲタクの間でもアンダーライブの存在そのものを知らない人も多いだろうし、これを通して乃木坂46がどう激動の時代を迎えているかは理解してもらうのも難しい。
けどいつかその彼女達が表舞台で活躍する日が来たとき、彼女達のアイドル観に深く影響してくるだろうことは想像に難くない。それを、そのいつかの日のために文字として残しておく意味はきっとあるだろうと思ったとき、それは使命感に近いなと思っただけ。
というわけで、乃木坂46アンダーライブの歴史から書いていこうと思います。
2014年4月13日、この日幕張メッセで乃木坂46の8thシングル「気づいたら片想い」の全国握手会が行われていた。その終了後、楽天カード会員限定で、8thシングル非選抜メンバー、いわゆるアンダーメンバーのみでのライブが催された。これがアンダーライブのスタートである。
楽天副社長への直訴などいろいろ経緯があるわけだが、公式サイトに
http://www.nogizaka46.com/video/index.php?bclid=nogikoko
“「乃木坂って、ここ」アンダーライブ密着ドキュメント”として動画が残っているので、それを見てもらうのがいいだろう。予期せぬアンコール、メンバーの達成感、萌芽という言葉がふさわしい。
これに続いて5月、渋谷O-EAST、ポートメッセ名古屋とシングル購入のおまけ、スペシャルイベントとしてのアンダーライブを成功させる。ただし、一次応募者数はO-EASTの1000ちょっとのキャパすら埋められず、急遽二次応募の実施、メンバーによる涙の懇願という有様であった。
この8thといえばアンダーセンターは伊藤万理華であり、今では選抜でも中心的な活躍をしている衛藤美彩、星野みなみといったメンバーもアンダーにいた頃である。8thアンダー楽曲「生まれたままで」は明るい曲調とは裏腹に、アンダーの現状を痛烈に風刺する歌詞で、伊藤万理華のアンニュイな雰囲気とそのセンターを象徴する曲でもある。
6月と7月には、乃木坂9th「夏のFree&Easy」のアンダーメンバーに2期研究生も参加し、ワンマンライブという形でアンダーライブが開催されることになった。場所は六本木ブルーシアターと追加公演が渋谷AiiAシアター。これがアンダーライブ1stシーズンである。
アンダーセンターは引き続き伊藤万理華であったが、前述の衛藤美彩、星野みなみ、そして井上小百合、斉藤優里という主要メンバーが選抜へと行ってしまい、アンダー常連で準選抜クラスの伊藤万理華・齋藤飛鳥ツートップの時代に突入していた。この2人が中心となって歌う9thアンダー曲「ここにいる理由」は、まさにアンダーとしてここにいる理由を問いかけていた。
そして10月には乃木坂10th「何度目の青空か?」のアンダーメンバーにより行われたアンダーライブ2ndシーズンは、12日間18公演という超強硬スケジュールで過酷さを極めた。
無印、1st と実績を積み上げ、この頃には六本木ブルーシアターの800というキャパではチケットの確保すら難しいイベントになっていた。そしてここで2作連続でアンダーのセンターを勤めた伊藤万理華から井上小百合へと、2代目のアンダーライブのセンターが引き継がれる。フロントメンバーは井上センターを万理華、飛鳥が支え、両翼には優里、中元というアンダーライブ黄金時代とでも言うべき時代だったように思う。
10thアンダー曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」は、アンダーライブを経た今のアンダーにしか表現できない激しいライブパフォーマンスに、井上小百合のセンターとしての存在感、それは “憑依” という言葉とともに語られることが多い。
アンダーライブが始まってアンダーセンターの重要さが増し、2ndはそれが万理華から井上に引き継がれる過程が特に印象的だった。万理華がバトンを渡し、井上小百合がセンターとしてステージに立つことへの熱い想いは、のぎ天の #12 アンダーライブに向けて精神修行をしよう!(3) をぜひ一度見ておいてほしいと思う。
2ndは18公演を無事に完走し、なんと12月には8000人キャパの有明コロシアムにて2ndファイナル公演が行われることとなった。しかもライブテーマは「全員センター」。これまで乃木坂46のメインストリームで光を当ててもらえなかったアンダー、研究生の全員が1曲1曲のセンターに立つというものである。アンダーライブの熱気そのままに、皆が主人公となれるこのファイナル公演は大成功のうちに幕を閉じた。ものの1年のうちにアンダーライブの乃木坂46内での重要度はますます上昇し、これはもはやムーブメント、そういう時代へと突入していた。
そして2015年4月、アンダーライブは3rdシーズンに突入した。乃木坂11th「命は美しい」のアンダーメンバーによるライブ。この2月に研究生全員がアンダーへと昇格したことで、彼女たちがアンダーとして初めて取り組むアンダーライブとなった。
初期アンダーライブの中心メンバーでもあった衛藤、星野、飛鳥、万理華の全員がアンダーとして活動する中で評価され、選抜メンバーとなった。そういうこともあり、突出したメンバーがいなくなり、スター性に欠けるアンダーではないか、正直期待できない、不安だ、という気持ちがあったのは確か。しかし、そんなことを一切感じさせなかったライブであったことは、ここで強調しておきたい。
この11thの3rdシーズン、井上小百合に続いてセンターに抜擢されたのは”中元日芽香“であった。中元センターに井上、斉藤優里という今まででは考えられないような組み合わせで、このアンダーライブを引っ張っていくことになったのである。
私は以前からよくアンダーライブのMCで言っていた言葉があります「ここは全員が主役になれる場所」全員が主役だから、全員がそれぞれの色で輝いていい輝いているべき、と思う。
アンダーライブだからこそできることアンダーライブでしかできないこときっとたくさんあると思う居場所にするのは違うけれどこの期間にそれぞれが何かを掴めたらいいな。
今回のアンダーライブでは、前回まりかがいたポジションに立つことになります。センターの左隣り。だから、今すごく、まりかの気持ちがわかります。
それに、まりかの気持ちもそうだけど、今回センターに立つひめたんの気持ちもすごくわかるんです。前回、このポジションでたくさん葛藤したから。だから、今回は、ひめたんを全力で支えてあげたいです。昇格した2期生も、アンダーとしての初舞台なので、みんなを支えてあげたいです。
これは、そんな2人の物語。
こうして、これまでのアンダーライブを影で支えてきた乃木坂46劇場とでも呼ぶべきブルーシアター、いつも僕らを待ち受ける急峻な鳥居坂を登り、この場所に帰ってきてみると、そこは Zepp ブルーシアター六本木と名を変えていた。
— もっちさん* (@Mocchi_tam) 2015, 4月 19
セトリ
- overture (オリジナル)
- 命は美しい
- 自由の彼方
- 世界で一番孤独なLover
- 夏のFree&Easy
- 走れBicycle
- 会いたかったかもしれない
- (ダンス:自己紹介)
- 孤独兄弟
- コウモリよ
- 音が出ないギター
- 月の大きさ
- 転がった鐘を鳴らせ
- 指望遠鏡
- 制服のマネキン
- ガールズルール
- シャキイズム
- (ダンス)
- 革命の馬
- ダンケシェーン
- ロマンティックイカ焼き
- ハウス
- (朗読)
- 君の名は希望
- 何度目の青空か
- 気づいたら片想い
- バレッタ
- ぐるぐるカーテン
- おいでシャンプー
- EN:アンダー曲メドレー(ここにいる理由〜狼に口笛を〜13日の金曜日〜初恋の人を今でも〜涙がまだ悲しみだった頃〜春のメロディー〜生まれたままで〜左胸の勇気〜扇風機)
- MC
- EN:あの日僕は咄嗟に嘘をついた
- EN:ボーダー
- EN:君は僕と会わないほうがよかったのかな
- EN:乃木坂の詩
- WEN:ロマンスのスタート
本編は最近流行りのノンストップライブ、そして過去最大曲数への挑戦。選抜を中心とした乃木坂46はライブ自体が少ないのだが、アンダーライブは公演を通してステージ上で色んなことに挑戦していくのがその大きな特徴でもある。
今回僕がアンダーライブに期待していた曲「ボーダー」。この2月に研究生が正規メンバーに昇格し、その元研究生だけでパフォーマンスをする楽曲。センターに立ち、初日はまだ不安そうにしていた蘭世が千秋楽では比べものにならないくらい堂々とパフォーマンスしていたのを見れて、本当に来れてよかったと思った。
僕はあまりこの乃木坂46研究生という言葉が好きではないのだけれど、正規メンバーに昇格できていなかった2期生に後付けで与えられた肩書きである。
この昇格組で驚きだったのが、普段はあまり目立たない純奈の歌がとてもうまかったこと。これからこういう一面を武器としてもっと活躍できればと思う。
アンコールの扇風機はぐるぐると回るフォーメーションのとき、どんどん遅れては走って追いかけるというまあやが面白くて仕方なかった。扇風機の中心に飛鳥がいないことは少し寂しかったけど。あえて言えば「ここにいる理由」も、アンダーライブでここにいる理由を問い続けた飛鳥と万理華の曲だと思っているから、複雑な気持ちだったかもしれない。
アンコールの最後の乃木坂の詩の前のMCで、今回のセンターであるひめたんが、今回のアンダーライブを通して感じたこと、こうしてアンダーでくすぶっていること、けど与えられた場所で全力で頑張っている今の気持ちを手紙に綴ってきた。それを聞いた皆号泣して曲どころじゃなかった。純奈は泣き崩れてしまい、他のメンバーも顔を押さえていた。ダブルアンコールの後に皆でマイクを通さずありがとうございましたの挨拶を終えたとき、割れんばかりの拍手が会場を包み込んだ。
初日にアンダーライブ3rdを見た時、ライブ終わりに新旧アンダーセンターの井上と中元が深々と頭を下げていたのを思い出す。そこでは膝の負傷のために足元がおぼつかず泣き崩れている井上を中元が支えて退場していった。なんとなく、2ndシーズンの時に万理華から井上にアンダーセンターのバトンが渡った時のことを思い出した。あの時力強くバトンを受け取りそして受け渡していくはずだった井上の怪我が、この3rdを成功させるための最大の懸念材料となっていた。
だからこそ、千秋楽もライブ本編では途中で離脱してしまった井上が、アンコールの11thアンダー曲「君は僕と会わないほうがよかったのかな」でステージに再び戻ってこれたときは胸が熱くなった。
歌というキラリ光るものを持つ中元だが、いつも自分は一歩引いて誰かを引き立たせてしまう。ファンは井上の怪我のことに一喜一憂し、それでいて中元はセンターながらサポートすることに徹していたように思う。それが中元センターの11thアンダーライブらしいといえばらしい出来事だった。それでいいと思う。そういう姿を見て評価している人も確かにいるから。
そういう意味では1stシーズンは選抜だったので遠目から見守り、無印、2nd、3rdと常に中心人物たちの近くにあり、影の立役者であった斉藤優里のことは忘れてはいけないと思っている。
アンダーライブは本当に最高だったし満足しているけど、その構成は僕は評価していない。メドレー形式のこれまでのアンダー楽曲、11thアンダー曲、元研究生の「ボーダー」、これだけでまたライブ一本できるような曲たちを全てアンコールにつめこんだこと。かつてアンダーライブの中心にいた飛鳥が、自分はアンコールがあると思ってライブをやっていない、自分たちのライブに慢心しない、アンコールを当たり前だと思いたくない、そう語っていたことを思い出すと本編で全てを語ってほしかった。
けど、アンダーライブという名前だからアンダー用の曲をやるライブであるというのは、そもそも最初からそうではなかったから思い違い。だから、乃木坂46の代表曲をしっかりノンストップでやりきった本編だけでライブを評価してアンコールはおまけ、そういう見方もあるので自分の批判は必ずしも正しいとは思っていないのだけど。
ライブにかける気持ちがパフォーマンスを超えてしまう瞬間があると知ったのがアンダーライブだった。小さい頃からレッスンを受けてステージにかけているアーティストに、乃木坂46というチームがパフォーマンスで勝てるとは僕は思っていない。かつてのアンダーライブは、ここを死ぬ気で乗り越えて成功させれば皆評価されていつか選抜に入れるだろうという根拠のない気迫があった。ここで頑張れなければ、評価されなければ、こんないつまでも光を浴びれないアンダーとしての乃木坂46を辞めてやる。そんな気持ちすら伺えた。その気持ちがパフォーマンスすら超えた時に会場に巻き起こる熱気は、僕が今まで見てきたどんなライブパフォーマンスよりも素晴らしかった。距離が近いから熱気を感じるのがアンダーライブだという人がいるけど、それは違うと僕は主張したい。だって、あの有明コロシアム公演を成功させたから。
そんな気持ちを裏切ったのが乃木坂の運営であるというのも事実。あの大成功のアンダーライブ1stの後、斎藤ちはるの初選抜以外誰1人選抜に呼ばれなかった。頑張っても誰も見ていないとメンバーが思い始めてから、あの熱気を超えるアンダーライブはもう見れていないと思う。
しかし、2ndのアンダーライブはパフォーマンス側に大きく舵を切った。そして今回の3rdのノンストップライブを成功させることに大きな意味があった。パフォーマンスでライブに来た人たちを満足させる、普段光はあたらないけどアンダーライブは自分たちが主役となって輝ける場所であるという意識に、居心地の良さすらあった。これは気持ちで作り上げるライブを通して成熟したライブ本来の姿なのだろうと思う。それをものの1年で作り上げた乃木坂46のアンダーライブの凄さは言うまでもない。
なにより、かつてアンダーライブの中心にあり今選抜で活躍する衛藤、星野、飛鳥、万理華を除けばあの時アンダーライブをスタートさせたメンバーたちが、こうして素晴らしい11thアンダーライブを作り出したことが本当にこの物語を追いかけていてよかったと思った瞬間だった。
アンダーライブ3rdを象徴する曲は乃木坂46の代表曲「君の名は希望」だったように思う。千秋楽の永島による曲振りがとても印象的だった。乃木坂46のオーディションに合格し、キラキラした世界を想像して上京してきた。けど乃木坂46に入ってからの日々は、それとは似ても似つかないほど泥臭くて日も当たらなくて苦しいだけの毎日だった。けど、そんな日の当たらないアイドル生活の中で、自分たちを見つけてくれていつも応援してくれるファンの存在だけが希望だった。それがまるで「君の名は希望」の歌詞にシンクロするようで、ステージに立つみんなの真実の叫びがダイレクトに届いてきた。
もともとこの「君の名は希望」はバラードなのにメンバーコールをするという酷い有様だった。ライブ慣れしていない乃木坂46の悪しき習慣だと思っていたけれど、アンダーライブで何度も何度も披露されるうちにこの3rdシーズンでは、次第に皆が黙って静かに聞くようになっていた。アンダーライブが成熟したというのはこういう面でも見て取れた。
最後に、アンダーライブには7th表題曲「バレッタ」を巡るもう一つの物語がある。これは2期生である堀が研究生からいきなりセンターに抜擢された楽曲である。そして、今回アンダーセンターである中元が唯一乃木坂46の選抜メンバーに選ばれた、彼女にとっても思い入れのある曲である。
アンダーライブ1stでは、2期生だけでこの曲を披露している。中元たち元楽曲選抜組は、自分たちの想いと裏腹に不安そうにパフォーマンスする2期生たちを複雑に思っていたと3rdのMCで語った。それと今の2期生のセンターに立つべき存在は堀ということで、センター不在でパフォーマンスをした(ちなみに一度堀がスペシャルゲストとしてこの2期生「バレッタ」のセンターでアンダーライブに出たことがある)。
そして2ndでは、アンダーメンバーだけでこの「バレッタ」を披露することになる。センターは2期生の北野日奈子である。かつて8th選抜を経験し、堀の良き理解者でもあり、若い2期生たちの頼れるお姉さん的存在でもある。実際に北野以外センターはありえなかったように思う。ただし残念ながらそこに研究生の姿は無かったと記憶している。
3rdでは、北野がセンターで2期昇格組が中心となってアンダーメンバー全員で「バレッタ」をパフォーマンスすることになる。これを見て、やっと元研究生であった2期生が正規メンバーに肩を並べたと感じることができた。
「バレッタ」を巡る物語はまだ終わらない。次の12thアンダーセンターは他でもないかつて表題曲で「バレッタ」のセンターにいたあの堀である。堀は研究生からいきなりセンターに抜擢されたので、これまで非選抜のアンダーを経験したことが無かった。だからこそ、本人のショックは計り知れない。
12thアンダー楽曲「別れ際、もっと好きになる」は堀がセンター、その両隣によきパートナーである北野と、元アンダーセンターとなった中元の姿があった。
12thのアンダーライブの開催はまだ決定していないけれど、1人の目撃者として乃木坂46の一大イベントとなったアンダーライブの継続を願うばかりである。