2017年10月、18thアンダーメンバーによるアンダーライブ全国ツアーは、地方公演としては約1年ぶりに九州での開催となった。
これを書いている今はまだツアー中だが、この熱意そのままにライブの感想を書きたくてブログを開いてみた。
僕の入った福岡公演のセトリは次のような感じ。
1.自由の彼方
2.嫉妬の権利
3.不等号
4.あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
5.別れ際、もっと好きになる
6.ブランコ7.ガールズルール
8.太陽ノック
9.裸足でSummer10.女は一人じゃ眠れない
11.無表情
12.太陽に口説かれて
13.隙間14.13日の金曜日
15.狼に口笛を16.アンダー
17.ここにいる理由
18.きっかけ
19.僕が行かなきゃ誰が行くんだ?
20.風船は生きている
21.いつかできるから今日できる
22.僕だけの光EN1.My rule
EN2.制服のマネキン
EN3,4.(日替わり)
EN5.乃木坂の詩
以下ライブの構成に従って書いていく。
1.冒頭~Overtureまで
これまで東北、中国と行われてきたアンダーライブ全国ツアーでは、これまでの乃木坂のライブとは一線を画す形で、一部演劇仕立ての演出が入る。今回の九州シリーズでも同様で、ライブ全体にストーリーが設定されており、今回は「アンダー」の楽曲を中心に据えたアンダーメンバーの歴史に焦点が当てられていたようだ。
幕があがると、まず1期アンダーメンバーがインスト アレンジされたこれまでの表題曲の中を踊る。そこに途中から2期アンダーメンバーが加わることで、これが乃木坂の歴史を表現していると分かる。そして、それぞれの表題曲で選抜になっていたメンバーはスポットライトの中へと踊り出る。しかし、その時期にアンダーだったメンバーはスポットライトの当たらない”影”の中を踊らされる。全員が背中を向け、誰も光の中にいない曲が途中現れる。13th今誰, 14thハルジオンで間違いないだろう。その悲壮感は、その時期の閉塞感を知っていると余計に胸を締めつける。
ステージサイドに目を向けると、細い光に照らされた花の存在に気付く。
今回のこのアンダーライブの持つメッセージを背負った、オレンジ、黄色、白、三色の”ガーベラ”の花である。色ごとに違う花言葉を持つが、それぞれの色を担うメンバーが決められている。
オレンジの色を背負うのがひめたん、その花言葉は「我慢強さ」である。1人のアイドル、そして卒業を控えるひめたんが背負うにはあまりに重い業を感じる。
黄色のガーベラを背負うのはひなちま、花言葉は「親しみやすさ」である。19th「My rule」のセンターでもあり、1期アンダーメンバーの中心をひめたんから引き継ぎ、実質このアンダーライブを大きく支える存在がこの言葉を担う意味は、このライブをじっくりと見てみるとよく理解できる。
白のガーベラは、1期ゆったん、かなりん、2期蘭世、みり愛にあてられ、そしておそらく全員がこれを背負っていたように感じる。花言葉はまさしく「希望」。
ガーベラの花をなぜ選んだかと考えると、全てに共通する「常に前進」という花言葉がアンダーメンバーのこれまでの歴史を表現するためにふさわしい言葉であったのだろう。
2.アンダー曲メドレー
寸劇とOvertureを終えると、アンダー曲のノンストップメドレー(自由の彼方~嫉妬の権利~不等号~咄嗟~別れ際~ブランコ)がお出迎えしてくれる。これもまた強いメッセージを感じずにはいられない。
1曲目はひめたんをセンターに据えた「自由の彼方」。自由の彼方といえば、さゆにゃんセンター、飛鳥、万理華が中心となったアンダー黄金時代の遺産とでも言うべき楽曲。その飛鳥、万理華のポジションには、蘭世とみり愛が入る。それぞれアンダーセンターを歴任して、大きく成長したボーダー組の2人である。何よりその強烈な歌詞は、このアンダーライブの1曲目としては非常に重い。自由の彼方に希望を信じていたのだろうが、鳥籠の中が幸せだったといつか気付くよ、と。解釈は人それぞれだと思うが、間違いなくアンダーへの強いメッセージがこの曲にはある。
2曲目、3曲目はひめたんセンターの代表曲である嫉妬の権利、不等号であるが、嫉妬の権利は本来堀とのWセンターであり、そのポジションには北野が入っているはずなのかもしれない。
このスタート3曲で乃木坂のパフォーマンスにおけるひめたんの重要さを痛いほど感じさせる。しかしライブはここから大きく変化する。ひめたんの隣で白のガーベラを背負う2期生の蘭世とみり愛、それぞれアンダーセンターを経験して、アンダー、ひいては乃木坂46にとって欠かせない存在となっている彼女たちがここからの主役だ。
そして4曲目「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」は、この蘭世・みり愛のWセンターである。元はさゆにゃん単独センター曲であるが、この2人のWセンターにアレンジされたパフォーマンスは、これまで見たどれともまた違い、それでいていずれにも見劣りしないとても素晴らしい曲として完成されていた。
ここで5曲目「別れ際、もっと好きになる」がみり愛センター、6曲目「ブランコ」は16thぶりにしっかりと蘭世がセンターに入る。東京体育館でセンターを経験したみり愛の歌唱とダンスには強い自信が感じられ、最近特に注目度の高いそのパフォーマンス力を大いに発揮する。そして何よりも蘭世は、自身のアンダーセンター楽曲で、自分がこのゼロポジションに絶対必要な存在であるという有無を言わせぬ存在感を示している。
蘭世とみり愛、この2人がこのライブにかける強い想いをひしひしと感じさせ、そしてその目はそのさらに上を見据えており、その覚悟に身震いする。その現状に妥協せず、高い意識で臨む姿勢が、このアンダーライブ九州シリーズの完成度をより高くしていることは容易に想像できる。
3.夏曲メドレー
夏曲メドレー(ガルル~太陽ノック~裸足でSummer)は、少しのブレイクである。特に、裸足でSummerでセンターに入るひなちまが、強く客席を煽ってきたことに驚いた。そしてとても楽しそうにセンターで踊るのである。なんだ、ちゃんと一級のアイドルじゃないか。
あえて言う必要もないかもしれないが、アンダーライブとガールズルールといえば、そう、そのセンターに入るのはいつもひめたんである。これも最後なのかと思うと寂しい気持ちであるが、これまでの感謝の気持ちも込めて全力のコールを贈りたい。
4.ユニットコーナー
アンダーライブは1人1人が輝ける場所。それはずっと言われてきたことだが、例えば全員センターといった形で全員にスポットライトを当てるということでその一つの答えを提示してきた。
しかし、今回の全国ツアーで、そして特にこの九州シリーズで、より高いレベルでその答えを示してくれた。それは端的に言えば、1人1人、自分たちが一番になれる才能を秘めており、それを輝かせるに相応しい場所があるということじゃないだろうか。
- 女は一人じゃ眠れない(川村、斉藤優里、和田、寺田、山﨑、渡辺)
- 無表情(川後、佐々木、鈴木)
- 太陽に口説かれて(能條、伊藤純奈、中田、樋口、相楽)
- 隙間(斎藤ちはる、伊藤かりん)
スタートはワンダーウーマンタイアップ曲の「女は一人じゃ眠れない」。最初のテーマはおそらくダンスパフォーマンス。アップテンポな楽曲に激しいダンス、そこに川村や和田にはさらにハイレベルなソロダンスが課される。2期生の3人もそのダンスや表現力の評価が非常に高いメンバーで構成され、一糸乱れぬパフォーマンスに釘付けにされる。
2曲目「無表情」はなんたる出落ち曲(笑)。無表情でパフォーマンスする楽曲に”ささきとすずき”を充てる遊び心と、そしてなぜ川後がいるんだwww 琴子のようにパフォーマンスが苦手なメンバーに対して、思わずニヤリとさせる演出にうまく着地させたと感服する。楽曲の最後はからあげ姉妹が笑顔になるのがお決まりだが、琴子は表情が固すぎて笑ってるのかよく分からない!!(笑) 最後まで面白すぎだろ!!
3曲目「太陽に口説かれて」は珍しい試みを取り入れ、そのラテンな曲調を活かしてセクシーな振りに刷新されている。かなりん、伊織、ひなちまと、セクシーに踊らせたら右に出るものがいない3人をダンサーに、能條と純奈という乃木坂でもトップクラスの歌唱力を持ち、しかもダンスも得意というユーティリティプレイヤーをツインボーカルに据える構成は、さながらわーすたを思わせる。無表情で和やかになった会場を一瞬にしてアダルティックな自分たちの雰囲気に巻き込んでいくパフォーマンスは圧巻である。
会場にいる誰もが息を呑んだのが4曲目の「隙間」だろう。こちらを担当する斎藤ちはると伊藤かりんといえば、アンダーの中でも指折りのボーカリストである。ダンス無しにその歌唱力だけで会場を魅了してしまうその力量に、アンダーの歌唱力層の厚さを改めて感じさせられた。かりんのただでさえ広い高音側への声域に、難しい楽曲ながらファルセットをうまく使いこなすそのボーカル力は目を見張る。そしてなによりこの2人のハモりに会場は熱狂の渦に包まれ、鳴り止まない盛大な拍手が最大限の賛辞を2人に送っていた。
5.アンダー・ストーリー編
このライブが表現しようとした最も重要なテーマが、”影”の「アンダー」に始まり本編ラストの「僕だけの光」へと連なるこのセクションに詰まっている。
ここでは冒頭のアンダーの歴史を表現したダンスに続き、ガーベラの花とともにオレンジのスポットライトの中のひめたん、黄色のスポットライトの中のひなちまによる「アンダー」の歌詞の朗読から始まる。これがこのセクションの中で、これから歌われる曲たちの歌詞に注目してほしいということを強調させ、強く脳裏に焼き付いてくる。
アンダーを乃木坂の影とする「アンダー」の歌詞は正直あまり好きではないけど、これまでアンダーライブのステージの上でメンバーたちが自分たちの現状について嘘偽りなく語ってきた言葉がそこにはあり、”あの頃のアンダー”の心境を歌っているものと受け止めている。現に、今はそれぞれのメンバーが自分たちの武器を作り、目標に向けて努力し、そしてそれが結実してきているメンバーが非常に多い。まさにその事実をこのセクションは伝えることになるので、1曲目、その出発点としてこの曲が選ばれることに異論は無い。
それを裏付けるように、2曲目は”あの頃のアンダー”を象徴する「ここにいる理由」が選曲されている。”あの頃のアンダー”として現状に苦悩し、必死にもがいていた伊藤万理華のセンター、フォーメーション2TOPに齋藤飛鳥が並び、ここにいる理由を問いかけていた曲だ。2人が選抜常連となった最近では、現状に妥協したくないここにいる理由に苦悩するメンバーがその2TOPに立っていたように思う。例えば昨年の武道館では、センター蘭世、その隣にはみり愛がいた。この九州シリーズでそのセンターに立つメンバーを見て心底驚かされた。鈴木絢音である。そしてその隣には山﨑怜奈が立っていた。つくづくよく出来たライブだと改めて実感させられる。そうか、かつての2人はもうこの位置より先へと歩きだし、代わりに今この曲の2TOPに立つのはこの2人だったか、と。2人ともここ最近で急速に個性を伸ばし、個人仕事までこなすようになってきた。アンダー楽曲でフロントまで任されるようになった。しかし、アンダーセンター未経験で、選抜からはまだあと一歩声のかからない”ここ”で苦悩している。だからこそ今この重要なポジションを与えられた意味を感じざるをえない。
ここでまた歌詞の朗読に戻る。ここからは「希望」の白のガーベラを背負った、ゆったん、かなりん、蘭世、みり愛がスポットライトを浴びる。そしてこれから披露する曲たちで何を伝えたいかを代わる代わるに朗読していく。ライブ中、こんなじっくりとこの歌詞たちの意味を考え、それらと向き合うことは無かったように思う。
ここからの曲はひたすらにメンバーたちへのエールであり、その歌詞は、自分は自分らしく生きろ、自分を信じろと鼓舞する楽曲である。
決心のきっかけは 時間切れじゃなくて
考えたその上で未来を信じること
後悔はしたくない 思ったそのまま
正解はわからない たった一度の 人生だ
乃木坂46屈指の名曲「きっかけ」は、このアンダーライブに相応しい曲の1つで間違いない。
そのセンターに立つのは、蘭世とみり愛である。ふと神宮公演の2期生ライブで披露した「きっかけ」がフラッシュバックする。2期生全員が過去に悩み、それでいて前へと踏み出すきっかけにしようと涙ながらに神宮球場に響かせたあの歌声は、忘れることができない。このアンダーライブで、蘭世とみり愛のWセンターとともにフロントに立つメンバーは、絢音と純奈の2期生の2人だ。この一曲にかける2期生たちの並々ならぬ想いが強く胸を打つ。
みり愛と蘭世がWセンターのまま、次の曲「僕が行かなきゃ 誰が行くんだ?」へと続く。僕の前に道はない、僕の後ろに道が出来ると伝えるこの楽曲は、やはりボーダー組の2人が歌ってこそ意味がある。ずっと昇格できず研究生時代の長かったボーダー組、アンダーを経験し、そして今では選抜を圏内に捉える人気メンバーになった。そしてさらにその先をも見据えている。これまで乃木坂で誰も経験したことのなかった、この茨の道を先頭に立って道を作ってきたのがこの2人である。
この曲に関しては、このアンダーライブのもつメッセージをより鮮明にするため、すべての振付けが1から作り直されている。特に、落ちサビ”僕が行かなきゃ 誰が行くんだ”と歌いながら、メンバー横一列で前へと歩き出すフォーメーションは鳥肌ものだった。この歌詞たちをこのライブで表現したいとするメッセージを強く確信した瞬間でもある。
初期のアンダーライブは、技術は追いついていないものの、それを遥かに超えた熱意とステージでファンを虜にした。今では数多くのステージを経験してきて成長したアンダーメンバーをしても、その熱意のボルテージはその成長より遥かに高いところにあった。プロのパフォーマーではない、”アイドル”の真骨頂は、この、気持ちが前のめりに歌やダンスにその脈動が乗ったライブなのではないかと感じさせる。
中でも、いつになく激しく歌い上げるみり愛のボーカルに強く引き込まれた。東京体育館でセンターを経験し、乃木坂46にかける情熱はこんなに熱く燃えたぎっていたのかと。
これに続くみり愛センターの「風船は生きている」を見れば、その成長は一目瞭然である。こんなにもメンバーたちの中心に立ってなお輝けるメンバーだったのかと思わされる。
この歌のこんな歌詞が好きだ。
つらい時には 休んだっていいじゃないか
ペチャンコ潰れて ダメな僕も僕なんだ
自分という風船は別に破れてしまったわけじゃない、現状に腐らずに努力すればまた大空も飛べるんだと続く。このセンターに立つ渡辺みり愛、そしてフロントを支える「ここにいる理由」のセンター任された2人でもある鈴木絢音と山﨑怜奈、この曲こそ彼女たちの心の叫びなのかもしれない。
クライマックスに向けて、最新シングル「いつかできるから今日できる」を再び蘭世とみり愛のWセンターでパフォーマンスする。ここまで自分たちを鼓舞してきたアンダーメンバーに、失敗してもいい。一歩踏み出そう。今日から。と歌う。乃木坂46の楽曲が増えるごとに、セットリストで表現できるストーリーの幅がどんどんと広がって、まさにこのアンダーライブで伝えたい言葉がこの最新楽曲で紡がれる。
今からどうすればいい? 光り方を教えて
どんな魔法使うのか? 近道探してた
どこにもそんなものは
ないこと気づかされた
一つだけ方法は 自分を磨くことだ
汗をかいて 何度も拭って
いつの間にか 何かがそっと輝く
僕だけの光 手に入れたい
そう他の誰も持っていない
心が 放つもの
未来照らすのは自分自身
本編最後にピアノの伴奏だけでアンダーメンバー全員が歌う「僕だけの光」の歌詞だ。「アンダー」という曲は、乃木坂46の影でしかなかった”あの頃のアンダー”だったとすれば、今ここにいるアンダーメンバーの現在地こそ「僕だけの光」だというメッセージに他ならないのだろう。
影と光、そっと日陰に咲く花も、内面から輝き出せばスポットライトなんか必要ない、僕だけの光を持っているから。そうやって手に入れた自分自身で輝ける力は、これからずっと自分自身を支える力になるだろうと思う。
影と過去を象徴するオレンジのガーベラ、そしてそれを一身に背負うひめたん、光と未来、そして希望を象徴する白のガーベラ、それはほとんどの楽曲でセンターを任され乃木坂46の次代を担う蘭世とみり愛を指すのだろう、そしてまたそれらを繋ぐ黄色のガーベラの存在が必要不可欠なのだと気付く。僕だけの光の真ん中に立って、力強い言葉を伝えるひなちまはこのアンダーライブにおいて非常に重要な存在だった。
僕だけの光、そしてこのアンダーライブは、ガーベラで彩られた大きなモニュメントとともに閉幕する。オレンジのガーベラに支えられ、黄色いガーベラがしっかりと繋ぎ、そして白いガーベラにスポットライトが当てられていく。このアンダーライブのメッセージが集約されたような景色だ。
そしてきっと、アンコールの最新19thアンダー曲「My rule」によってこのストーリーのエピローグが語られているのではないかと感じる。ひなちまをセンターに、その両サイドを蘭世とみり愛が支えるこの曲で。
たとえ困難なことがあっても、何があっても逃げ出さない。強い意志をもって自分を信じて生きていけばいい。
一歩踏み出した先の未来はきっとこんな世界なんじゃないだろうか。そして、今アンダーメンバーにこの曲が与えられた意味を考えたくなる。
ここまでライブをざっと振り返ってみて、最初3曲で大きな存在感を示すひめたんはそれ以降皆を支える位置につけ、代わりにこのライブの主役は2期生の蘭世とみり愛の2人へとバトンタッチしていくように見える。
これにはきっと賛否両論あるだろうが、この18thアンダーメンバーがこのアンダーライブで発信するメッセージをより明確にする意味で、このスタイルは良かったんじゃないだろうかと思う。オレンジのガーベラが蒔いた種を、より高みを目指す2人には結実させてほしいとこれからも強く願い続けていく。